"We have to learn about the conditions that set the problem in the course of trying to solve it."
(Noam Chomsky, 2008, On Phases, p.135)

黒田成幸、ゼータ関数、言語学と数学

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01 17

UCSD名誉教授でいらした故黒田成幸教授(2009年没。生成文法理論黎明期から日本語文法研究や形式言語理論研究において多大な功績を残した; http://ling.ucsd.edu/kuroda/obituary.html )は、彼の遺稿論文『数学と生成文法』(2009)において、文脈自由句構造言語と呼ばれる形式言語のある特定の部分言語を算術化し、その累和としてラマヌジャンのゼータ関数(ζ functions)を特徴づける、という一大構想をぶち上げています。少なくとも二次ゼータ関数までに関しては部分的な成功を収めたようです。数論や力学系の研究を始め数学や物理学の様々な分野で用いられているゼータ関数ですが、それがある抽象的なレベルで言語の形式構造にも関わりを持つことが示唆されているとしたらすごく面白いですよね。曰くこの研究の示唆するところは「ヒトの言語のありようも、数学的実在として、情報の構造とともに、奥深い数学的実在と本質的に全く無関係ではないかもしれない」ということだそうです。ヒト言語はヒトの生物学的所与であるという意味で文字通り自然物であるわけですが、その構造もやはり自然界の背後に抽象的に存在する数学的実在からの影響下にあるということが、とても奇妙な形で、そしてもしもその全貌が明らかにされたならば大変な知的好奇心を喚起するだろう形でさらなる証左を与えられていることになります。 僕は数学の知識が絶対的に不足しているため、目下この研究の意義を全く理解できておりません。言語学しかできない人間の限界をこうまざまざと見せつけられて悔しい限りなんですけど、でもいつかはしっかり黒田先生のお仕事を読み込めるようになりたいなあ。 ※参考文献:・黒田成幸(2009). “数学と生成文法—「説明的妥当性の彼方に」、そして言語の数学的実在論 福井直樹へ贈る一つのメルヘン.”  Sophia Linguistica 56:1-36.・Kuroda, S.-Y. (1976). A topological study of phrase-structure languages. Information and Control 30.4: 307-379.

成田広樹・福井直樹「言語を巡る「何」と「なぜ」―生成文法の視点から―」所収の『日本語学』11月号 今日発売

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11 1

お知らせです。明けて今日11/1、明治書院刊行の『日本語学』という雑誌の11月号が発売されます。今回は「言語と進化」に関する特集号になっています。 第三章として福井直樹先生との共著の解説文「言語を巡る「何」と「なぜ」―生成文法の視点から―」が収められております。 言語理論の歩んできた途の概説として、なるべく平易に書いたつもりですので、もしもご興味があればどうぞ。 Amazonなどでも購入可です: http://ow.ly/7ei1k よろしければ!

とある理論言語学大学院生のEvernote活用法(2010年8月現在)

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08 19

@rashita2 さんのブログ『R-style』で今朝「Evernote企画4th:第0回:「あなたのEvernote術教えて下さい!」企画」というエントリを目にしました。8月16日 ~ 8月22日 23:59:59というエントリー期間を設け、R-style読者から寄せられたEvernote活用術を共有することで情報交換の場としてくださるそうで、どんなアッと驚く使い方が寄せられてくるのか今から楽しみです。 思えばひょんなことから@goryugo さんのブログ『goryugo, addicted to Evernote』を拝読する機会に恵まれ、Evernoteに興味を持ち使い始めたのが今年の6月1日、以来主にこのお二方のブログやそこで紹介されている人々のEvernote活用法を聞きかじり見かじりしつつ自分なりに試行錯誤を重ねてきました。僕は2ヶ月強ということで全然使い始めてからの日が浅いんですけど、とはいえ上記ブログなどの力を借りてかなり好スタートを切れたつもりでいます。また、学生言語学者である僕は基本的に人と会っている以外の時間では一日中パソコンに向かいっぱなしで研究しているので、朝起きてから夜寝るまで常にEvernoteとともに生活をしていますから、短いながらも濃いお付き合いを通してそれなりにEvernote活用に関して自分なりの工夫もできてきたところでした。 さて、@rashita2 さんの仰る通りで、「自分が当たり前だと思っているやり方は案外他の人からみると意外な使い方だったりする」ということがEvernoteではよくあると思います。このことを僕は自分の過去の経験から知っていましたので、先達への恩返し、というわけではありませんが、前々から一度ブログを通して自分のEvernote使用法を公開し、他の皆々様(別に言語学研究者に限らず)に参考にしていただきたいと思っていました。今回@rashita2 さんブログからまさに渡りに船の企画をいただいたので、これを機会に一度現時点での僕のEvernote活用法をいくつかのポイントに分けて紹介したいと思います。書いてみたらかなりガッツリ長くなってしまったんですが、まあ部分部分でご参考になれば幸いです。 (「Evernoteってどういうソフト?」という疑問を持たれた方は、上記の『R-style』や『goryugo, addicted to Evernote』などのブログの初期のEvernoteエントリをたどるなどしてみてください。お手軽に使えてすごく便利なソフトですよ。ビジネスマンのみならず大学院生にもすごくおすすめなソフトです。以下は基本的なEvernoteの操作方法を理解されている方を対象に書きます。) 1: Evernoteを英単語や専門用語の単語帳として活用する まずは僕のEvernoteの一番上5個のノートブックを紹介。以下のようになってます。 初めに、すでに他の方のブログなどでも盛んに紹介されていることなのですが一応確認を。Evernoteは基本的にノートブックを名前順に並べてしまうので、自分の好みのノートブック順を実現するためにはノートブックそれぞれの名前の先頭に数字をふるなどの工夫を施す必要があります。以下僕のノートブックそれぞれが「03.」などの数字をふられているのはこのためです。 まず「00.Inbox」は言わずもがなですが、Evernoteでクリップを取り込むデフォルトの保存先としてのみ機能しています。これも先達のお知恵を拝借した結果です。 さて、ここからまず一点目なんですが、僕はEvernoteを自分なりの「単語帳」として活用することを最近始めました。僕はアメリカに留学している大学院生として生活している以上、基本的に毎日授業に出たり先生や同僚とかとメールのやり取りをしたり論文を読み漁ったりして知識の増大を目指すわけですが、そうするといつだって知らないことがいっぱい出てくるんですね。まず英単語。論文特有の難しい言い回しに始まり、言語学や哲学など調べてる分野の専門用語およびその分野ごとの特異な意味・含意も知らなければいけないですし、またしゃべる準備をするためにはアクセントや発音のことも気にしなければいけない。またそりゃいっぱしの成人としてそれなり新聞やニュースも読みますし、言語学以外のことも時間をとって勉強しますが、そうするともう次から次へといろんなカテゴリーのいろんな用語が入力として頭に入ってきます。全部を一つ一つ覚えようと思ってもそうそうできるもんではありません。きっと半分以上次の日には忘れてたりするんでしょう。 さて、記憶補助装置としてのEvernoteの便利さの一つに、およそウェブ上のものなら、ないしクリップボードに取り込めるものなら、なんでもノートとして切り貼りしてスクラップ保存できるというのがありますよね。僕が上のように雑多な調べ物をする際には論文PDFのみならずオンライン辞書やWikipediaやGoogleやニュースヘッドラインや個々のブログ記事など、あらゆるソースにアクセスするわけなんですけど、用語を調べるたびにとりあえずそれぞれのソースをちゃちゃっとEvernoteに取り込んで保存しておく。僕の場合保存先はこの「01.単語帳」です。とりあえず今日の僕の「01.単語帳」ノートブックを開くと以下のようになりました。 表示されているノート例は”extricate”という単語をMac付属の英和辞書で引いた情報をそのままコピペしたものです。この他、例えばIvy League8校がちゃんと覚えきれてない、と思ったらそのWikipediaの項目を取り込み、また株のことを調べてたときにふとぐぐって見つけた「PER(株価収益率)」に関するどこぞのブログのわかりやすい説明を取り込み、また親族構造に関する系統的な知識をかなり正確に記憶できるらしい猿baboon(=ヒヒ)のことを認知科学の機関誌で読めばその該当箇所のテキストをコピペしてかつGoogle imageでbaboonの画像を取り込み、などなどをしておきます。各ノートのタイトルにはその用語のみを記しておきますと、後で見返すときにこれがそのまままるで単語帳のように使えます。要するにこのノートブックを開いたら各ノートの見出しタイトルを見て、「どういう意味だったかな」とか「どういう関連で調べたんだっけかな」ということを思い出すよう試みる。そしてノートを開いて答え合わせをする、という要領です。 ちなみに上の画像の二個目のノート「’     reconcile」ですが、これは前々から知ってたつもりだった”reconcile”(和解させる)の特にアクセント位置の把握をあやふやなままにしていたことに気づいたというときに、特にアクセント位置を確認する単語帳エントリーにするために置いたものです(アクセント関係の確認ノートも結構あります)。 何度か繰り返し確認するうちに「あ、この用語・単語はだいたい頭に入ったな」と思ったら、そのノートを「02.単語帳(覚えたかな?)」に移します。そしてまたしばらく後にこの「覚えたかな」リストも見返してみて、「もう大丈夫だろう」と記憶に自信が出てきた用語・単語に関してはもう「03.単語帳(覚えた!)」に移す、と。これは紙の単語帳で言えばそのページを破り捨てるのに当たるわけですな。とはいえまあ人間の記憶なんてあやふやなものですから、自信を持って「記憶完了」の太鼓判を押したものでも1ヶ月後・一年後には忘れてるかもしれません。だから02や03に入ってるノートも必要によってはやっぱりまた01.の現役の単語帳として再利用することもある、という感じでしょうか。また、時間がなくて・ないしオフライン作業中につき調べるのをとりあえず後回しにしたいものに関しては「05.知らない/いずれ調査」に一時保管しておく、というユルさも残しておくといいと思います。 ところで単語帳用途のEvernoteに関して一つ注意点が。Evernoteはノートブックを開くたびにその一番上のノートを自動的に開いてしまいます。僕はデフォルトの表示を「作成日時順」にしているので、この場合一番新しいノートが常にノートブックを開くたびに自動的に表示されてしまい、結果意図せずして答えを“カンニング”する形になっちゃうわけですね。まあそんな細かいことをあまり気にする必要もないのかもしれませんが、僕は「_______」というブランクのノートを常にこのノートブックの先頭に置くようにしています。Evernoteは各ノートの作成日時や更新日時も後々修正できるんですけど、この「_______」の作成日時を3010年辺りに設定しておけばとりあえずどんな新しいノートにも追い越されることはありません(笑)。 ちなみにこの作成日時修正による順番管理は色々なところで活躍します(たしか@goryugoさんのブログで読み知った方法だったかと思います)。この単語帳に限って言えば、何度も間違える用語・単語のノートは作成日時をいじって常にノートブックの上位に表示するようにしておく、などの用途が考えられます。というか僕はそうしてます。 このご時世ですから、英単語帳やビジネス用語確認なんてのはiPhoneの辞書アプリの付録機能だったりでこんなマニュアルなやり方よりも効率のいいやり方があるのかもしれません。しかし言語学の専門用語や和製英語や日常会話やスラングなど、ありとあらゆる英語や日本語のレジスターを一緒くたにサポートできる辞書なんていうのは端からありえないし、だからこそEvernoteの可塑性が活きてくると僕は思います。 こういう利用法でEvernoteから恩恵を受けるにつけ、もし例えば10年前、自分が大学受験をしているときとかにすでにEvernoteがあったらだいぶ勉強の効率が上がっただろうにと、思ってしまいます。「1931」→「満州事変」みたい歴史などの暗記物にも応用できるし、数学の公式を登録することもできた。便利そう! まあでもその頃は今よりずっとパソコンに向かう時間も少なかったわけですから、なんともいえないかもしれませんが。 ともあれ、人間一生学び続けるわけですし、その一助としてEvernoteを使ってみてはいかがでしょうか。 以上が僕の単語帳としてのEvernote利用法の説明になります。 2: 長期・短期・当日タスクリスト兼日記としてEvernoteを利用する 2なんつって仰々しく書きましたが、これはもう先達の皆々様がやっていらっしゃることとあまり代わり映えはしないと思います。大体タイトル見て内容はお分かりになるでしょう。3以降で言語学者としてのEvernoteの僕なりの用途についてご説明しますので、必要ない方はどうぞこの「2」は読み飛ばしてください。 僕の10番代のノートブック(の一部)は以下の通りです。 「12.近々やりたい」と「13.いつかやるかも」がいつも「あ、これをやりたいな」という思いつきを徒然なるままに書き留めておくノートブックです。優先順位や緊急度などでどちらに書き留めるかをその都度判断します。これで短期、長期のTo Do リストの完成ですな。その上で僕は「12.近々やりたい」を夜な夜な眺めながら、だいたい就寝前くらいに、翌日に成し遂げたいこと、「博論の2節の3パラグラフ目を書き足す」とか「Bittner and Hale 1996を半分読む」とか「☓☓大学准教授職への応募書類の3節を書く」とか「買い物する」とかいう実現可能な範囲で細かく区切った仕事リストを「10.今日やる!」に書き込んでおきます(場合によっては10−11時でこれをやる、と時間指定もする)。 当日はその「今日やる!」リストの仕事をなるべく組んだ予定通りにこなしていきます。仕事が終わるたびに「14.やった」ノートブックに完成したタスクのノートを移していきます。晴れて「今日やる!」ノートブックのノート数が0になったら今日のお仕事修了、ご苦労様、というわけです。「やった」ノートブックはこういうわけでどんどんノートの数が増えていきますけど、ここに表示される数字が大きくなると自分が(一つ一つは細かろうが)なんかいっぱい仕事してきたんだなあというのを数字の大きさで見れて「ムフフ」となります(笑)。 僕はちなみに「今日やる!」リストを作るときに既に”100817=”とか”100816.10-11=”というような自分なりの年月日の接頭辞を各ノートに付しておくようにしています。こうしておけば終了したタスクを「やった」ノートブックに移していくだけでその「やった」ノートブックが後で読み返せる簡便な日記にもなり一石二鳥。基本的に僕はこのタスクリスト用途では各ノートはタイトルしか書き込みませんが、とくに日記としての利用を充実させたければ、各ノート毎に必要なときにコメントを残しておけばいいでしょうね。 3: (言語学)研究活動の補助としてEvernoteを活用する いよいよ僕が実際の研究活動のお供としてEvernoteを使っている場面について説明させていただきます。以下僕の20番代、本業の言語学関係のノートブック一覧です。 とりあえずノートブックごとの説明を。25番のついたノートブックの活用が結構肝なんで、とりあえずそれ以外のノートブックの説明から: 「20.Diss To Do」は上記「12.近々やりたい」の言語学バージョンというか、とくに博士論文執筆に特化したタスクリストです。 「20.問い」は研究を進めていく上で思いついた疑問点、研究課題等を書き留めていくノートブックです。日進月歩の生成文法理論ですが、そこではいつなんどきどういう部分にアイディアが出てくるか分かりません。自分が疑問に思ったことをメモの形で書き留めておくだけでも思わぬところで複数の問題間に連関を見出したりとかいうことが起こると思います。 「21.分からない」は上記「05.知らない/いずれ調査」の言語学バージョンですな。 […]

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